今回の修復工事では、2022年8月から12月にかけて主屋(おもや)南棟、北棟、そして内蔵(うちぐら)の三つの建物の屋根、外壁、外装建具を修復します。内蔵については土蔵本体の漆喰外壁ではなく、蔵の覆いである鞘(さや)の板壁と屋根のみを直します。工事の設計は横手市平和町のミツイ設計さん、施工は横手市増田町湯野沢の藤原工務店さん。平成の店蔵の修復工事もこの二社でやってくださいました。
8月第3週から4週にかけて、主屋南棟の周囲に屋根の軒の高さの足場が組まれました。
主屋南棟
主屋南棟は切妻造り(きりづまづくり)の二階建て木造建築です。切妻造りとはニつの傾斜屋根が山形になっている屋根ないしそのような屋根をもつ建物で、屋根が三角形に見える側が妻(つま)、台形に見える側が平(ひら)です。佐々虎の主屋南棟は妻側に表通りに面する入口が設けられている「妻入り」の建物です。
左手(北側)は中庭を挟んで主屋北棟で、右手(南側)には「まちの駅 福蔵(ふっくら)」さん旧佐藤與五兵衛家(屋号ヤマヨさん)があります。福蔵さんは干し餅で有名な佐忠商店さんの店舗兼カフェ。佐忠さんのお餅と地元の小豆で作ったぜんざいや、稲庭うどん、増田の手打ちそばなどをいただくことができます。
足場組み立て
佐々虎と隣家の福蔵さんの間の路地は狭いところは幅が半間(約90cm)もありません。
ここに金属製の支柱や手摺、踏板を使って職人さんたちがテキパキと足場を組んでいきます。アンダーベース代わりのブロックや支柱に付けたジャッキでレベルを出しながら、主屋の奥から玄関まで一階の天井の高さの足場があっという間に組み上がりました。
次は正面です。ここは下屋(げや:母屋から張り出した屋根)があるので地面からの足場に踏板を敷いた後、下屋の上にもフレームを延ばしてしっかりした板を渡し作業場を作ります。
南棟正面の空き地は資材置き場になっています。
主屋南棟の北側の中庭にも足場を組み建物をコの字型に囲まないといけないのですが、中庭にはもう水は流れていないものの堰(せき:水路)があって岩も点在し、かなりの凸凹。職人さんたちが慎重に作業を進めます。
南棟と北棟は昔々はこの堰で隔てられた別々の家で、二つの建物の間(つまり中庭の幅)は一間超。いつも小川のせせらぎが聞こえ夏には蛍が舞う、気持ちの良い空間でした。南棟の二階には一面をガラスの明るいベランダがあったのですが、先の冬になんと窓枠ごとガラスが落ちてしまい今はベニヤ板で塞いであります。他にも割れた窓に板が打ち付けてあったりビニールシートだけで応急処置がされていたり、下屋のトタンもひどく錆びていたり、、、あらためて写真で見ると中庭周りは満身創痍ですね。
足場完成
翌週、三方の足場をさらに軒の高さまで組み上げて足場が完成しました。
これから屋根が葺かれ、外壁の板が新しいものになり、漆喰も塗り直され、外装建具も新調されるにつれて父や母が愛したこの古い家が息を吹き返していく ー それを見るのが楽しみです。
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